治療の目的

―そもそも、なぜ人は心に傷を負うのでしょうか?

 人は、予測が出来ない・コントロールができない出来事に直面することにより、心に大きな衝撃を受けると考えられています。突然の対処不能な出来事により、安心と安全が脅かされ、自分には何もできなかったという感覚に襲われるのです。現在、様々な治療方法がありますが、トラウマ治療の目的は主に2つであると言えます。

  • コントロール感を取り戻す

 PTSDと診断された方の多くは、過去の記憶に振り回され、自分でもコントロールの出来ない恐怖や苦痛を感じています。PTSDの治療では、治療を通して<恐怖や苦痛の感情をともなうコントロール出来ない記憶>を、<コントロール出来る普通の記憶>に置き換えていきます。つまり、自身のコントロール感を取り戻し、日常に安心できる感覚を取り戻すことが治療の目的となります。

  • 価値観の再生と世界に対する信頼感の回復

 トラウマ体験を経験すると、世界は安全ではない、何も信じられるものはないといった考えを持ちやすくなります。「自分が弱かったから被害にあった」、「外は危険でいっぱいだ」といった考えでいっぱいになると、<買い物に行けなくなった><学校や仕事に行けなくなった>というように、以前はできていたことも、できなくなってしまいます。自分が悪かったから被害に遭ったのではないということや、世界はそれほど危険ではないということを頭ではなく心で受け止められるようにすることを目的とします。

一番大切なのは本人の回復したい気持ち

 「治すのは自分」という意識が回復を促します。自分を大切にすること、今の自分を認めて受け入れることが回復への大きな一歩となります。カウンセラーは、ご本人様自身の治る力を引き出し、回復を促すサポートをさせていただきます。

参考:飛鳥井望監修「トラウマやPTSDで悩む人に「心の傷」のケアと治療ガイド」. 保険同人社. 2010

白川美也子監修 「トラウマのことがわかる本 生きづらさを軽くするためにできること」. 講談社. 2019

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